少佐と主任の三歩進んで二歩下がるお話

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  僕と彼の生きる道 03  

 何時の頃から降り出していたのか、天から数多に落ちてくる大粒の雨。そう言えば、やけに外が騒がしく感じたのはこの所為だったのか。
 恨めしく天を睨み付けても、それで雨が止む事はない。
 今朝の出掛けに天気予報を確認したのだが、今日はギリギリ天気は持つと言っていた筈なのに。予報を裏切って、気の早い雨が一足先に降り出してしまったのか。そんなわけだから、今皆本の手元に傘なんかありはしない。
 せめて折り畳みくらいは、と考えながらも大丈夫かと高を括ってしまった今朝の自分に戻りたい。
 会社にも何本か、いつかに誰かに忘れ去られた傘や、予め備品として置かれている傘があるはずなのだが、皆本と同じ憂き目に遭った人間が他にも居たのか、見事に傘立ての中は空。
 こうなると分かっていたのなら、遅くまで残らず送って行くと声を掛けてくれた友人の誘いを断らなければよかった。
 いやそれでも。
 今日態々残業をしたのは今日中に終わらせておきたかった仕事が残っていたからで、早めに切り上げる事など出来なかった。それに既に雨が降っているのなら、賢木も一言そう言ってくれれば良かったのに。
 しかし、予測出来たのに軽視してしまった己の早計振りを棚に上げ、賢木に責任転嫁をした所でこの雨が止んでくれるはずも無く、また雨が止むはずも無く。
 日付を越えて幾ばかりかが過ぎた頃。
 この時間帯にもなればタクシーの数も少ない。休日前であるのなら多少望みはあるかもしれないが、今日はまだ週が始まったばかり。週明け早々、本当についてない。
 これならばいっそのこと今日はもう会社に泊まってしまおうか。いやしかし、家に居る筈の子供達の事も気になる。いくら彼女達が超能力者だからと言って……、否、だからこそ心配だというべきか。――主に、家の惨状が。
 今日は最初から残業するつもりであったから、チルドレンにもそれは通達済みだ。夕食についても、デリバリーで済ませるように言ってはあるものの、家主が居ない事を幸いと騒いでいるかもしれない。
 大人しく寝ていてくれれば皆本の心配も杞憂に終わるのだが、チルドレンに関しては予測不能というか、期待を良くも悪くも裏切ってくれるというか。
 だが、何もチルドレンのことを信じていない、というわけではなく、ただ心配なだけだ。
 家族のように、近しい存在。
 ならば、皆本が取る行動は一つだけだ。
 もう一度、降り止む気配を微塵も見せてはくれないいけずな天を見上げて、仕方が無い、と一歩を踏み出した。――その、視界の中に。
「兵部……?」
 薄がりにぼんやりと浮かぶ、人の形を模した輪郭。
 それが徐々にはっきりと現れ、それは見知った人物の姿をとる。唐突なその出現に、最早条件反射とでも言うように懐に手を入れ、銃を握る。
 しかし皆本は、それを取り出すことは出来なかった。
 ゆっくりと歩み寄ってくる兵部は、相変わらず表情を動かす事はなく――それでも皆本の取った動きには若干寂しげな顔を見せたが――皆本の前に立つ。
 傘に落ちる雨粒の奏でる音がうるさい。一体いつから雨の中に立っていたのかは知らないが、学生服のズボンの裾が濃く変色している。その部位だけではなく、服全体も湿気を孕んでいるようだ。
 不意打ちとしか言いようのない兵部の登場に、すっかりと皆本の思考は固まってしまう。その固まってしまった皆本をただ見つめて、兵部は差していた傘を僅かに傾けた。皆本のその頭上を覆うように。
「帰るよ、皆本君」
 その誘いは尊大。
 断る事を想定していない物言いに、是と言う返事しか受け取る気はないと書かれた顔。
 いつだって兵部は唐突で強引で自己中心的で、相手のことなど考えていないようだけれど、ちゃんと、考えている。少し不器用でその方法が分からなくて、そう映ってしまうだけの事。よく知れば彼がどんな人物なのか分かる。
「――あぁ」
 懐に仕舞い込んだ銃は、今は必要ない。

 雨の中、ただ一本の傘を差して周囲など気にせずに歩く。少なくとも今は人通りも少ないし、たとえ居たとしてもこの雨では碌に顔も見えやしない。だから皆本は安心して兵部と歩く事が出来る。
 これが人の多い日中であるのなら、絶対に有り得ない事だ。
 だからだろうか。
 隣に兵部が居るという事が妙にくすぐったく感じてしまうのは。
 堂々と人前に出ることの出来ない自分達はいつも逢う場所は制限される。それが悲しくないわけはないが、だからこそ一分一秒でも逢える時間が愛おしい。
 道中会話はなくとも、心は常に同じ場所にある。だから、兵部の向かう先が皆本の住むマンションでなかったとしても、呆れはすれどそれを受け入れてしまうのだ。勿論、念の為に釘を刺すのも忘れはしないが。
「言っておくが僕は疲れているからな」
 エントランスで傘を畳み、必然的に埋められていた二人の距離が開く。兵部は何も返すことはなく、ただ皆本を一瞥すると周囲の景色が変わる。エントランスにいたはずの二人は、薄暗い玄関に立っていた。
 一人淡々と靴を脱ぎ廊下を歩む兵部を怪訝に思いながらも、皆本を靴を脱ぎ後姿を追いかける。と、いきなり腕を掴まれ、押し込まれたのは脱衣所。眼を白黒させながら兵部を見れば、何、と眼差しが問う。
 何だか普段と違うような、兵部の様子にどうすればいいのか、皆本はただただ困惑するばかりだ。何か言ってくれれば皆本も対処の仕様があるというのに、それすらない。
「風邪引く前に風呂入りなよ」
「え、あ……、……あぁ」
 どうにも歯切れの悪い返事となってしまったが、それを聞いて満足したのか、兵部はくるりと踵を返すと一人出て行ってしまう。その振り返った背中を見て、皆本はきゅっと眉を寄せた。
 学生服の右半分の色が変わっていたからだ。
 ずっと傘を差していたはずなのにどうして、なんて、分からないわけがない。だから皆本に傘を譲ることはしなかったのかと唇を噛む。
 相傘をするのなら、背の高い方が傘を持つ方が都合がいい。確かにそう差はないかもしれないが、皆本は態々迎えに来てくれたことも含めて傘を持つと申し出たが、兵部はそれを受け入れなかった。
 当たり前だ。そうしていれば、きっと皆本は兵部と同じ事をしていた。しかし兵部は、だから自ら傘を持ち、皆本にスペースを譲ったわけではない。始めからそのつもりでいたのだ。
 己が濡れる事を厭わず、皆本を雨に当たらせない為に。
 そしてあまつさえ風呂まで用意してくれたというのに、自分はそんな兵部に対してとんでもない邪推をしてしまったのではないだろうか。
「……っ」
 少なからず、久々に会えたのだし皆本の中に僅かなりともそういう気持ちがないわけではない。だが何も言わずに優しさを与えてくれた兵部に、なんと浅ましい事を。
 悔やんだ所で吐いた言葉は戻らない。それでもきちんと謝罪しようと決意すると、皆本は兵部のお陰で濡れる事のなかったスーツを脱ぎ、風呂場へと足を踏み入れた。
 蒸気に包まれた浴室内。自分の住むマンションと造りは違うとはいっても、使い慣れた場所でもある。使い慣れたその理由はあまり思い出したくはないが、眼鏡がなくとも支障はない。自分以上に冷えてしまっただろう兵部こそ風邪を引かせない様に、適当に温まって出よう、と決意する、その傍で。
 脱衣所でなにやら物音がしているのは、シャワーに掻き消されながらも気付いていた。けれどそれは、兵部がタオルや着替えを用意してくれているのだろうと気にも留めなかったのだが。
 何の言葉も無しに、ガラリと開け放たれた浴室のドア。
 流れ込んできた冷たい空気に身震いが起こる。
「ひょ、兵部っ!? お、な、なんっ……」
 いくら視力が悪くて物が見え難くなると言っても、何も見えないわけじゃない。輪郭は多少危ぶまれるが色が分からないなんて事はない。――兵部は今、裸だった。
 惜しげもなく、恥ずかしがることもなく、晒された素肌。
 焦る皆本に動じる事もなく兵部はドアを閉めると、皆本からシャワーを奪いそれを全身に浴びせかけた。
「うわっ!? ……っ」
「ほら。どうせまだ洗ってないんだろ? 僕が洗ってやる」
「えっ、や……、あ、――えぇッ!?」
「まったく……。浴室は響くんだから大声を出すな」
「いや、じ、自分で洗えるっ!」
 わたわたと、無駄と知りつつの攻防は結局兵部に軍配が上がる。
 問答無用と椅子に座らされ、シャンプーを手に取られればそれ以上の抵抗は無駄だ。皆本は諦めて大人しくされるに任せるが、居た堪れなく、これ以上ないほどに気恥ずかしさが込み上げてくる。
 大人にもなってこうして髪を洗ってもらうなんて。
 けれど、緊張しガチガチに固まっていた身体も、意外と手馴れたようにシャンプーしていくその手付きに緊張が解けて行く。リラックスし始めたのが兵部にも伝わってきたのか――あるいは透視んだか――その手付きが更に優しいものに変わる。
「痛くはないかい?」
「あぁ。もうちょっと強くてもいい」
 我が侭か、とも思ったが、兵部は要望通りに僅かに力を強めて洗っていく。
 聞こえてくる己の心音と髪を洗い立てるその音に、疲れもあってか睡魔が襲ってくる。頭を固定していようと思っても、つい、うつらうつらと舟を漕ぐ。
 微かだが、くすりと笑われたような気がした。
「流すから、目、閉じて」
 指示通りに瞼を閉じ、頭に程よい水温のシャワーが降りかかる。髪を梳くように指がシャンプーを洗い流していく。もういいよと、その声を合図に伏せていた顔を上げれば、脇から兵部の腕が伸び何かを掴んでいる。
 それが何か瞬時に理解し、夢現に旅立とうとしていた意識が現実に帰ってくる。
「兵部っ。後は自分でやるから……」
「皆本君は疲れてるんだろう? 僕が綺麗に洗ってあげるから」
 どことなく、楽しそうに聞こえてしまうのは気のせいだろうか。いやきっと、気のせいなんかじゃない。下手すれば鼻歌なんて聞こえてきてしまいそうで、恐ろしい。
 抵抗しても無意味である事は分かっている。
 ならば大人しく兵部の好きなようにさせるのが得策ではないだろうか。それに、兵部が尽くしてくれるという事は、正直珍しい。
 そもそも、兵部は何故、あの時間帯に皆本がいる事を、そして傘を持っていないことを知っていたのだろうか。いつも神出鬼没に現れてくれる兵部ではあるが、皆本個人の行動をそこまで把握しきれるものなのだろうか。
 もし、皆本が残業を切り上げて賢木と帰っていれば。
 もし、皆本が帰宅を諦めて会社に泊まったとすれば。
 スケジュールは把握出来てもあくまでもそれは予定であり、絶対にそうしなければならない決定事項ではない。その日一日の行動は、謂わば皆本の気紛れや周囲の状況で変わってしまう可能性も出てくるのだ。帰宅時間も、進行状況により早くもなり遅くもなる。
 もしまだまだ時間が掛かっていたとするならば、兵部はあの雨の中いつまでも皆本が出てくるのを待っていたのだろうか。
 ――ずっと?
 あの雨の中で、一人で?
「ひょう、ぶ……」
「なんだい?」
 強すぎず、弱すぎない、絶妙な力加減で身体を擦っていく手を掴む。口にするのは慣れず、また恥かしくもあり心内で問い掛ける。
 どうせ今此処にいるのは兵部しかいないのだからどちらでも変わらない筈なのに、その差は何だろう。
 口にして、言の葉に乗せて実感するのが怖いのだろうか。だが一体何に恐怖する必要があるのだろうか。ただ一人悶々と思考を巡らせて、その実兵部の行動には全くの実がないことが嫌なのだろうか。しかしそれならば、裡に留め答えを求めなければいいだけのことだ。なのにわざわざそれをする。
 ああそうか。
 そうして、疑り不安になるそんな自分を、嫌われるのが怖いのだ。
 ただでさえ皆本は、兵部に対して負い目を感じている。
 普通人である自分。
 バベルの職員である自分。
 敵対しなければならない自分。
 兵部はそれらを関係ないと一蹴するが、そうはいかない。何れはこの関係が互いの足枷となる日が来てしまうのだ。
 そんなことはないと願いたい。否、願っている。けれど、と思う。考えたくなくても考えてしまう。いつまでもこれはついて回る事だ。そして、もしこんな関係にならなければ、と行き着いてしまう。
 だがそれは決して後悔しているからじゃない。兵部を愛してしまったことを嘆くわけでもない。嘆くのは、こんなにも弱い自分自身だ。いつだって猜疑心が付き纏う。素直に受け入れる事が出来ない。割り切る事が出来ない。ならこんな自分など、いつか兵部のほうから見限ってしまうかもしれない。それが怖い。だから甘えたくない。
 優しさを向けられると、疑わなければ崩れ落ちていきそうになる。
「光一」
 呼び掛ける声に身体が、心が過剰に反応する。滲んだ世界は決して視力云々の問題じゃない。
 たとえどんな言葉を貰ったのだとしても、何度繰り返してもきっと皆本はまた同じ事を考える。決して問題が解決する事はない。兵部の言葉がその場限りの、安っぽい言葉なんかではないと分かっていても、不安は拭えない。
「まったく君は……」
 厭きれてしまったのか。続きの言葉なんか聞きたくはない。
 何時だって兵部に捨てられる恐怖に怯えている。
「どうして僕が君を捨てるのか、甚だ疑問だね。可能性としては、僕が君に捨てられる事の方が高そうだけど」
「そんな……っ」
 振り向いたその先に兵部の顔が見えない。
 溜息にさえ身を強張らせてしまう自分が情けない。
「君はつくづく理解出来ないよ。あんなに喜んでいたかと思えば急に一人勝手に悩んで落ち込んで。こんなに僕を振り回してくれるのは君以外に存在しない」
「え……」
 一体いつ兵部を振り回していただろうか。皆本にその意識は無い。だから兵部の言っている意味も分からない。
 困惑を顔に浮かべる皆本に仕方がないとでも言うような表情で、兵部は不便だと呟く。
「どういう……」
「僕は君の心が分かるのに、君には僕の心は分からない。だからその分言葉にしてみても君はその全てを受け入れてはくれない。いつだって喜んでくるくせにその心を否定して本心を偽って、その内に自分の本心でさえ分からなくなってる。――僕は皆本君の事好きだよ。君は?」
 照れや羞恥もあっていつも兵部の言葉は受け流していた。そうしても兵部は何も言わなかった。
 だからいつの間にか、そう返すのが当たり前になっていた。見限られるのが怖いと思いながらも、兵部の優しさに思いに甘えきっていた。
 同じ言葉を返したことがあっただろうか。言葉にしなくても兵部は心を透視めた。だからそうする必要はなかった。だがそれが、皆本が言葉にしない故の、苦肉の策であったとすれば。
 誰だって心は透視されたくない。兵部とて、己の愛する人の内側を透視するような行為はしたくないだろう。それは、疑っているのと同じだ。信じられないから偽り切れない心を透視する。そうして変わる事のない心に安堵する。
 だが始めから皆本が口にしていれば、そんな事をする必要はないのだ。そんな事にも今まで気がつかなかった。気が付けなかったのは、己の保身で手一杯だったからだ。言い訳にもならない。
 結局自分のことしか考えていなかったから、兵部のことを信じきっていなかったからこんなに不安になる。自業自得だ。
「ごめ、ん……、兵部」
「そんな言葉を聞きたいんじゃない」
「うん……。どうしよう、兵部。僕、兵部のことがすきなんだ」
 すきですきでたまらない。
 不安になって疑心暗鬼になってしまうほど、心は兵部の元にあった。どうしてそれに気付く事が出来なかったのだろう。何故、受け入れる事が出来なかったのだろう。
 きっと、怖かった。嫌われることではなく、兵部無しでは生きていけなくなってしまうのが。
 なのに。
「構わないさ。僕は君を手放すつもりなんてこれっぽっちもないんだからね」
 兵部は簡単にそんな事を言ってしまう。何処までも不遜できっとそれは何時までも変わる事がない。
「君のそのネガティブ思考は、変わってほしいものだけどね」
「……仕方、ないだろう。初めて……なんだ」
 こんなに誰かを好きになるのも。
 好きと言う感情があるが故に此処まで自分が情けなくなってしまうことも。
 こんな自分を初めて知った。だからどうすればいいのか分からなくなる。それでも分かるのは、互いが互いのことを好きだと思っていること。それだけは確かだ。
「本当にしょうがないな、坊やは」
「うるさいな」
「ははっ。……まあ、とりあえず風邪引かないうちにお湯につかりなよ」
 泡塗れだった身体も時間が経って幾分か泡が流れ落ちてしまった。それにいくら浴室に居るといっても湯に浸からなければ身体も冷えてしまう。手早く泡を洗い落として、兵部は皆本を湯船に送る。
 湯船にのんびりと浸かりながら今度は自分の身体を洗い始めた兵部を物珍しく見つめ、ふと疑問に思っていたことを口にする。
「そういえばお前って慣れてたよな」
「そりゃ、慣れてるからね」
 一体どうして慣れているのか、とは聞きたくない。姿形こそは若く偽っているが、皆本の4倍ほどは生きている。その人生で色々とないはずがない。
 しかしそう言った皆本の思考を透視んだのか、兵部はどこか呆れたような表情で
「本当に馬鹿だな。皆本君は」
「なっ。馬鹿ってゆーな」
「いつも気を失った皆本君を、誰が風呂に入れてると思ってるんだい」
 反論も空しく危うく聞き流しかけた兵部の言葉に、一気に皆本の顔が赤面する。
 それは常々疑問に思っていたことであり、何と無く分かっていた事ではあるのだが、実際に口に出されるとかなり恥かしい。
 ということはつまり、意識のない自分は毎回ああやって兵部手ずから洗って貰っていたということか。計らずもその成果を実感する羽目となり、無防備だった自分はそれはそれは素直に兵部に身を預けていたことだろう。
 逃げ場の無い浴室でそれでも兵部から離れて浴槽に張り付く皆本に、兵部の楽しげな笑い声が届く。
「憶えてなかったのかい? そのまま此処でヤったこともあ」
「ああああぁぁあ!?」
「!?」
 響き渡る大音響と、上がる水飛沫。
 どうせ浴室に居るのだから湯を被ってもこれといった被害はないが、それはそれ。
 ぼたぼたと湯を滴らせる髪をかき上げて、兵部は不敵に笑う。唯一の出口は兵部の背中。皆本は浴槽の中に居るのだから、兵部の圧倒的有利は変わらない。
「観念しろよ、皆本君」
「やっぱりお前なんか嫌いだぁぁあ!」
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