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  あいくるしい  

「ほら、いつもシてるようにやってごらん?」
 背中から耳元に囁かれ、皆本がくすぐったそうに身体を捩る。重ねられた手が皆本の下腹部へと伸び、そのさらに奥を弄る。
「やめっ、むりだ……っ」
「始める前からそんなこと言ってちゃダメだろう?」
 優しく咎められ、兵部に操られる手が柔らかい欲望に触れる。皆本の手ごと、兵部の手が欲望を擦り、熱を高めていく。
「ぁ……んっ、んっ、ゃぅっ」
「そのまま、君一人で続けて」
 甘く皆本を唆して、兵部の手が離れる。自身を慰める手は、止められなかった。兵部に手元を覗き込まれながら、上下に擦る。
 うなじに、首筋にかかる吐息にぞくぞくと背筋が震えた。
「なにを考えてる?」
 耳に押し当てられた唇が、低く囁く。
 皆本は小さく息を弾ませ、唇を引き結んだ。俯きがちになる頭をそっと撫でられ、知らず溜息を洩らしてしまう。
「君の頭の中には今、どんないやらしいことが浮かんでいるんだろうね」
「やめっ……! 視るな!」
「君が自分の口で教えてくれるなら、視ない」
 咄嗟に暴れた身体を易々と押さえ込まれ、耳元で脅される。かたく引き結んだ唇を指になぞられて、皆本は喉奥で呻いた。
「……お、前に、触られてる……」
 絞り出す声で、皆本が観念する。身体は羞恥に震え、耳まで赤く染まっていた。
「どこを?」
 それなのに。
 あくまでも優しい声で、けれど容赦なく追い詰められる。皆本は恥ずかしさに消えてなくなりたいとすら思っていた。どうしてこんなことにと、兵部を詰りたい気持ちもある。
 それでも、背中に当たる兵部の欲望を感じると、どうしようもなくなってしまう。自分のこんな姿にも兵部が欲望を猛らせていると考えるだけで胸が熱くなり、はしたなく雫を溢れさせてしまう。
「胸……とか、太股撫でられて、キス、されると……」
「気持ちよくなって濡らしちゃうんだ?」
「そ、う……っ」
「でも、それだけじゃあまだイけないだろ?」
「んっ、兵部に、触られてるの思い出しながら触ると、僕っ……!」
 甘苦しい責めに、皆本のものはかたく張り詰め、反り返っていた。溢れる雫に先端がぬるぬるとぬめりを纏い、皆本が手を動かすたびに淫猥な水音を響かせる。
 もう、見られていることも、自分が痴態を晒していることも頭にはなかった。目を閉じて兵部に抱かれた時のことを思い出しながら、ひたすら自らを急きたてる。時折、快楽にくねる腰が、熱く逞しいものを求めるように兵部に擦り付けられていた。
「は、ぁっ、兵部っ、……でるっ」
 首を反らし、喘ぐ唇で切羽詰まって吐き出すと、いきなり手を引き剥がされた。
 行き場をなくした快楽の波が腰の奥で重くうねり、皆本を切なくさせる。
「ぁっ――、な、んで……」
 たまらずに、皆本は責めるような声を洩らしていた。皆本の濡れた手を兵部が取り、ねっとりと舌が這う。いやらしく音を立てて、皆本の雫が舐め取られた。
「いつも、そうやって僕とシたときのことを思い出して気持ちよくなっているのかい」
「っ、そう、だよっ」
 皆本は自棄になるように叫んでいた。
「可愛いな、皆本」
 頬に軽くキスをされ、皆本は狼狽える。思い出したように込み上げてくる羞恥に、途端逃げ出したくなる。だが腰にはしっかりと兵部の腕が回され、わだかまる熱にも満足に動けない。脚を閉じようとしても、内側から押し広げる兵部の脚に邪魔される。
 皆本が身体を捩り、戸惑っていると腰に強く兵部の欲望を擦り付けられ、皆本はびくりと背中をしならせた。
「これが欲しい?」
 低い声で囁かれ、皆本は唆されるままに頷いていた。促されるまま、向かい合わせに兵部の腰を跨いで膝立ちとなって、自分の素足と、その中心で晒す欲望が恥ずかしくてたまらない。
 皆本がシャツを引いて、腰をくねらせると兵部が笑いながら唇を触れ合わせてくる。
「そっちのほうがいやらしく見えるよ」
 濃厚に舌を絡ませながら、太股を擦る兵部の手がゆっくりと付け根へと這い上がってくる。皆本は兵部の肩に手をついて、たまらなく身体を波打たせた。
 兵部の手は肝心な所には触れず、付け根の辺りを撫で回し、皆本を焦らした。肩に縋る手に力が入り、淫らな情動が押し寄せる。
「触って、出すところを見せて」
「んっ、……汚れ、る」
「君がちゃんと受け止めればいいじゃないか。ほら」
 浅く、尻の割れ目を撫でられて、皆本は喘ぎを洩らすとそっと反り返ったものを握りしめた。触れただけで、寸前まで高められていた欲望が熱く脈打ち、腰が崩れそうになる。
 震える腰を兵部に支えられ、見守られながら、皆本は熱を弾けさせた。手の中に受け止める迸りが、収まりきれずにぽたぽたと滴り、兵部の制服にシミを作っていく。
「あぅ……っ、は、ぁ……」
 痺れたような指を動かすと、くちゅ、と卑猥な水音が響いた。皆本が手を離せずに固まったままでいるとそっと手を掴まれ、後ろへと導かれた。
 身体を揺らし、逃げようとする皆本を片腕に捕らえて、兵部がシャツのボタンを外していく。前を開かれ、胸を舐められて、ぞくりと肌が粟立つ。
「自分で解さないなら、このまま突っ込んでやる」
 粗野な恫喝に、皆本は喉をひくつかせ、のろのろと指を動かした。痛いのは嫌だ。濡れた指先で窄まりを撫で、浅く抜き差しを繰り返して徐々に深く埋め込んでいく。
 その間も、兵部は皆本の胸を舐り、尖った乳首を唇に含んで吸引する。甘噛みされる痛みにぞくぞくとした震えが奔って、内奥を弄る指を締め付けていた。
 もどかしさの募っていく腰を兵部の手のひらが煽るように撫で、指を呑み込んだそこを押し開かされる。
「あっ、あうっ、……やめ、兵部っ」
 兵部の興奮した息が首筋を撫で、竦んだ耳を熱く舐られる。
「そんなこといって、奥はきつく指を締め付けてるんだろう? びくびく震えて、熱くてかたいものを早く銜え込みたいと思ってる」
「くぅんっ、うっ、ううっ」
 囁き、兵部の指がひくつく襞をなぞる。皆本は首を振り、否定するがざわつく内奥に裏切られる。絡みついてくるように粘膜がうねり、腰が揺れる。
 ベルトを外し始めた兵部に、胸を喘がせて期待する。取り出された兵部の欲望は皆本の痴態に熱く漲っていた。兵部が自ら擦り立て、皆本のそれに擦り付けられると、たまらなく悶えてしまう。
「兵部……」
 顔を寄せ、皆本からキスをねだる。唇と舌を熱く吸い合って、皆本は兵部へと膝を進めると兵部の逞しいものを指で弄った。
 ひくつく入り口に押し当て、皆本の唇から恍惚とした溜息が滴る。
「我慢できなくなった?」
「……ああ、我慢できない」
 深く息を吐き出して、皆本は自ら腰を落とした。内奥を押し広げられながら、兵部を呑み込んでいく。苦しさに呻きが零れるが、途中で止めるのはもっと苦しい。
 太い部分を銜えると、それだけで達成感のようなものがあった。だが、まだだ。脈打つものの長さを確かめるように指を這わせると、兵部が低く声を洩らし、欲望を脈打たせた。
 皆本が怯えて腰を揺らすと、唇に薄く苦笑いを浮かべて口付けられる。
「いやらしい坊やだ。あまり煽ってくれるなよ、滅茶苦茶にしたくなるだろ」
 熱い囁きに皆本は小さく身震いし、兵部を見つめる。どこか困ったように、だが熱を湛えて見つめてくる兵部に、意識すべてを奪われる。鼓膜をくすぐる甘い囁きも、呑み込みかけた欲望の逞しさも、強く腰を抱く腕の力にも、ぐずぐずと蕩かされる。
 皆本は兵部へと手を伸ばすと、両頬をそっと持ち上げさせ、唇を重ね合わせた。慎重に探るように舌を入れて、くすぐるように擦りつけられる舌に熱が上がる。
 一気に残りを呑み込むと、皆本は二度目の精を放っていた。腰が抜けたように身体を動かせなくて、そんな皆本を抱えて、兵部が下から突き上げ始める。
「あっ、ああっ、……ん、んんっ」
「きつい締め付けだ。いやらしく吸いついて離れないじゃないか」
 苦しそうに息を吐きながら、兵部が責め立ててくる。皆本はなにも、考えられなかった。ただ大きく膨らんだ兵部の欲望を全身で感じ入り、内奥に注がれるものを待ちわびる。
 抑えきれない淫らな悦びにキョウセイを上げ、深い官能に酔い痴れる。これを耐えることなど、できるはずがない。一突きされるたびに胸の中に兵部を愛おしく思う気持ちが広がり溢れて、皆本を満たしていく。
「――さあ、そろそろ奥に飲ませてやる」
 内奥を抉るように突かれ、じっくりと感じさせられて、大きく脈打つものが熱い精を迸らせた。皆本は深い溜息を零しながら腰を震わせ、粘膜をうねらせてそれを受け止めた。
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