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「は…、っふ……」
 かたく反り返っていくものの先端から、透明な雫が浮かび始める。それを絡めた指がびくびくと震えるものを擦り、鍛えられた腹筋を震わせる。すらりと伸びる白い脚が快感に震え、シーツの波の間に妖しく泳ぐ。
「…息が上がってるんじゃないか、皆本?」
 問いかけられ、皆本は慌てて眼前の光景から視線を剥がす。あまりにも目に毒な、兵部が自ら慰めるその姿に、いつしか皆本のそれも反応を示していた。
 白い肌は興奮に淡く色付き、薄く開いた唇から溢れる熱い溜息。伏し目がちな瞼が小さく震えて、縁取る睫毛を揺らす。倒錯的で、淫猥な姿に男として反応するなというのが難しく。
 脳裏に浮かばせただけでも腰をもじつかせてしまう皆本を、兵部がぐいと引き寄せる。前屈みに倒された皆本の眼前に、先走りを垂らす兵部の欲望があった。びくびくと震え、熱を放ち、いやらしい匂いを沸き立たせるそれに、知らず喉が鳴る。
「舐めたい?」
 意地の悪い声で囁かれた言葉に、皆本は喉の渇きを強く覚えていた。視線を逸らしたいのに逸らせない。皆本の目の前で、欲望に淫靡に白い指が絡み、上下に擦る。
 滲み出す雫に、どうしようもなく息が逸る。
「触るなよ?」
 おかしそうに喉を鳴らした呟きに、皆本は無意識に持ち上げかけていた手でシーツを握り締めた。悔しげに兵部を睨みつければ、悠然と微笑み返される。
 こんな時でも憎たらしいくらいに、その表情は皆本を引きつけてやまない。
「飲ませてあげるから、そんな顔するなよ」
 先走りに濡れた手で頬を撫でられ、唇を辿るその指に皆本は舌を伸ばしていた。ちぅ、と音を立てて吸い付くと、おかしそうに笑われる。

「ああ、もう出そうだ」
 兵部の宣言のとおり、打ち震えるそれは熱を吐き出したそうに力を漲らせていた。
「口を開けろ」
 命じられるままに、皆本は口を開け、待った。だらしなく垂らした舌から涎が滴り、そして。
 熱い液体が口の中に迸り、皆本はそれを喉を鳴らして飲み込んだ。


 ◇◇◇


「は、あぁ……っ」
 昂りに触れただけで、熱い溜息が滴った。ぶるり、と腰を震わせて深く息を吐き出し、ゆっくりと擦る。
 兵部の卑猥な姿を見せられて、熱い精を喉奥に感じ、それだけで皆本のものは腹に反り返るようにかたくなっていた。先ほどの情景を瞼の裏で再生しながら、皆本は自身を慰める。
「すぐにはイくなよ、皆本」
 喉を鳴らして笑い、すっかりと熱を収めてしまったように冷めた口振りで、兵部が嘯く。誰のせいで、と胸中に文句を吐き捨て、しかし盗み見る兵部の眼差しは、熱く皆本を見つめている。
 冷静な瞳の奥に、ぎらついた欲を感じる。
「んっ」
 見られている、と感じるだけでぞくぞくと身体が痺れ、指が覚束無い。けれど身体の奥に溜まる熱をどうにかしたくて、皆本はひたすらに自らを掻き立てる。
「あっ、あっ」
「だらしのない身体だね。上も下も涎を垂らして、締まりのない。後ろもひくついてるんだろう? 触らなくていいのかい」
「う、るさ…っ」
 きつく兵部を睨みつけながら、皆本は唇を噛み締める。内奥がひくついて、どうしようもなかった。先走りに濡れた指で、そっと襞を撫でる。背中がしなり、喘ぎが零れる。
「あ、あぁ……」
 内奥の熱さに慄き、けれど一度そこに触れてしまえば、歯止めが利かなくなる。指を一本ずつ差し込んで、蕩けた粘膜を擦る。
「ああっ、あっ、……んっ、ふ、ぅんっ」
 びくびくと震える内奥の中で指をばらばらに動かし、解す。
 腰から背筋へと駆け巡る快感に目が眩み、何も考えられなくなる。
「あっ、ああっ、もっ、でる…っ」
 自ら内奥を弄り慰める情けない醜態を晒しながら、皆本は絶頂を迎えていた。


 ◇◇◇


 ベッドに組み敷かれ、熱く見下してくる兵部に皆本はたまらずに顔を背けた。一度欲を吐き出したばかりだというのに、あるいはだからなのか、早く兵部が欲しくてたまらなかった。
 だがそんな言葉を口にできるはずもなく、兵部の熱い眼差しに耐え続けていると、ふっと、頭上で息が零れた。
 背けていた顔で兵部を見ようとして、視線を合わせる前に、唇を塞がれる。
「ん、――んっ」
 強引に捻じ込まれる舌に口腔を蹂躙され、唾液を啜られる。貪り合うように唇を吸い、隙間から零れる乱れた息遣いには、余裕などありはしなかった。
 両脚を抱えられ、皆本が自ら解したそこへと兵部の欲望が擦り付けられ。無意識に腰をくねらせ、襞をひくつかせると楽しそうに兵部が笑う。
「あ――、うぅっ」
 文句を言うはずだった唇から、呻き声が零れる。小刻みに内奥を突き上げながら、容赦なく兵部の高まりが入ってくる。こじ開けられる痛みに身体は悲鳴を上げるが、兵部は動きを止めない。逞しいものが奥へ奥へと捻じ込まれ、皆本を圧倒的な存在感で満たしていく。
「す、こしは、加減しろ……っ」
 たまらずに皆本が愚痴を零せば、鼻で笑われた。内奥を更に兵部の熱で押し広げられ、喘ぎが洩れる。
「それはこっちの台詞だ。ぎちぎちに締め付けて、このまま食いちぎられそうだ」
 そう言って兵部が薄く笑い、繋がり合った部分を指でなぞってくる。
 皆本は息を喘がせ、絞り上げるように兵部を締め付けた。
「まだ締め付けてくるか。本当に貪欲だな、君は」
「だれの、せいだとっ……」
 皆本がきつく睨み付けると、兵部が欲望を脈打たせて、顔を近寄せてくる。ぐうっと内奥を深々と貫かれ、喘いだ唇に舌を差し込まれる。
 濃厚に舌を絡ませながら、内奥を擦られる。
 そのたびに愉悦が込み上げ、痛みが和らいでいく。兵部に擦られる粘膜がざわつき、うねって、そこを擦るものをきつく締め付ける。
「ふ、んんっ、……ん、くぅっ」
 シーツに縋り、皆本は全身で喘いでいた。反り返ったものから雫を垂らし、興奮したものを打ち付けてくる兵部に熱く息を乱す。身体を大きく揺さぶるように下から突かれ、腰がびくびくと戦慄いた。
「あ、ああっ、……あっ、いっ、ぃ…」
 内奥で息衝く熱が愛おしく、きつく締め上げると兵部が低く呻き声を洩らした。お返しとばかりに深く身体を貫かれ、声も出せない強い快楽を皆本は味わわされていた。蠢動する粘膜がたまらなく兵部に絡みつき、抜き差しされるたびに引きずり出されるような感覚を覚える。
「ひぅっ、あっ、ん……っ、んうっ、うぅっ」
 突き刺すように抉ってくる兵部の欲望に、皆本はただ翻弄される。あまりの激情に、ただしがみついているだけで精一杯だった。
「このまま、君を抱き殺してしまいそうだ……」
 低く、掠れた声で呻くように囁いた兵部に、皆本は息を詰め、ゆっくりと吐き出した。
「出来もしないくせに――、ああっ!」
 兵部の腕が皆本の脚を掴み直し、大きく腰を突き上げられる。腰から背筋へと一気に駆け抜けた愉悦に皆本は大きく身体を仰け反らせ、絶頂に達していた。虚空へと恍惚と息を吐き、妖しくうねる粘膜が兵部を締め付け、急かす。
「だったら、試してみようか。君が泣いて懇願するまで、気を失ってもずっと、抱き続けてあげるよ」
 囁きに、皆本はぞくぞくとした震えを感じ、身体を捩らせた。
「だがその前にまずは、君の好きなものを奥にたっぷり注いであげる。ずっとこれが欲しかったんだろう?」
 内奥で爆ぜる兵部の欲望に、皆本は陶然と頬を緩め、粘膜を熱く蠢かせた。

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