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  甘く濁る  

 身体に感じる肌寒さ、内側から熱く疼くような感覚に皆本の意識は覚醒へと導かれる。開けた視界が映すのは、変わる事のない自室の天井。
「……ぁ?」
 漏らした声は身体の疼きを吐き出すかのように、甘い響きを含んだものだった。身体が熱く、発熱しているかのようにぼんやりとする思考。
「さむ、……」
「なら僕が温めてあげようか?」
「え――」
 くすくすと、聞こえてきた楽しげな笑い声に皆本は目を丸くする。視線を下へと向ければニヤニヤと笑う兵部の姿。
 そして自分が一枚も服を身に着けていないことに気付き、思考が一瞬停止する。
「うわああぁっ!?」
 咄嗟に何か隠すものを、と探すが辺りには何も見当たらない。身を捩ろうにも身体は動かない。
 慌てる皆本に対して、兵部はクス、と笑って「男同士何恥ずかしがってるんだい」と嘯く。
「それにしても可愛くない悲鳴だ。きゃー、くらい言ってみたらどうだい?」
「黙れ、ケダモノ!」
 罵声を浴びせる皆本に、兵部はクッと喉を鳴らす。
 冷ややかな笑みに、ゾクリと身体が粟立つ。
「いいな! 僕は化け物で、ケダモノか」
 合ってるかもね、と片頬で笑う兵部の双眸は笑ってはいない。室温でさえも一、二度下がったような気がして、皆本はその血色の良い顔を青褪めさせた。

「ヒ、ぁあ……! あッ」
 部屋の中に嬌声が響き渡る。
「ははっ。嫌がるわりには随分良い反応を見せるね、皆本」
 ビクビクと痙攣する身体。粘膜を収縮させては、兵部の精を搾り取ろうとする。身体を支える腕にも力が入らず、少しでも力を抜けばそのまま崩れていきそうだった。
 皆本の昂りを弄る手も弱められることは無く、淫猥な音を立てて扱かれる。擦られ続けた陰茎は痛みすら感じ始めている。なのに、触れられれば勝手に勃起する。感じたくないのに、感じてしまう。
「あ、ああ…! も、やめ…ッ」
「こんなに悦んでるのに?」
 言いながら、内奥を埋め込まれた屹立で突き上げられる。反射のように溶かされた粘膜は兵部を締め付けて、皆本は身体を仰け反らせる。
 結合部からは淫らな音が響き、流れ出す泡立った白濁が兵部の下腹を汚していく。
「悦んで、なんか……っ」
「それだけの反抗心が残ってるならまだまだイケそうだね」
 兵部の浮かべた、お気に入りの玩具で遊ぶ子供のような表情は、皆本の視界に入ることは無い。
 顎先を舐める舌にさえ、悶える。喘ぐ口の中に兵部の舌が侵入し、戦慄く舌が絡め取られる。
「ン、ふ……っ、んぅっ」
 息苦しさに涙が滲むほど口内を蹂躙され、解放されても甘い痺れを残した口を閉ざすことは出来ない。零れる唾液にすら、肌がざわつく。
「気持ちいいだろう?」
 甘く囁きながら、兵部は皆本の昂りを撫でる。指先が溢れる蜜を掬い取り、先端に塗りつけられる。
「んん…ッ!」
 縋った兵部の背中に、皆本の爪が食い込む。その痛みに兵部は僅かに顔を顰め、緩やかに口角を吊り上げるとその顔を皆本の胸元へと寄せた。
「仕置き――だ」
「ひっ」
 敏感に尖った乳首に噛みつかれ、そのまま引っ張られる。同時に性器も上下に擦られ、皆本はその胸元へと白濁を飛び散らした。
「ふ、あ、ああ……っ」
 兵部の屹立からもまた白濁が迸り、濡れた体内へとその全てを注がれる。萎えることの無い性器に肉を掻き混ぜられ、皆本はただ薄れる意識に微かな喘ぎを零すだけだった。
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